「第四次元の小説 幻想数学短編集」
「ぼくの質問というのはこうなんだ。フェルマーの最後の定理は正しいか。」
悪魔は思わず口をあけた。初めて彼の自信に満ちた態度はくずれた。
「最後の何だって?誰の?」
彼はうつろな声でたずねた。
「フェルマーの最後の定理、これは数学の命題で、17世紀のフランスの数学者フェルマーが証明した、といっている。しかしながら、彼は証明を書き残さなかった。今日にいたるまで、この定理が正しいか否かは、誰も知らない。」
サイモンの唇は、悪魔の表情を見るとちょっとゆがんだ。
「さあ、これが問題だ。やりたまえ。」
(悪魔とサイモン・フラッグ)
- 作者: R・A ハインライン,三浦朱門
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 1994/08/01
- メディア: 単行本
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タキポンプ / エドワード・ペイジ・ミッチェル 歪んだ家 / ロバート・A・ハインライン メビウスという名の地下鉄 / A・J・ドイッチュ 数学のおまじない / H・ニアリング・Jr 最後の魔術師 / ブルース・エリオット 頑固な論理 / ラッセル・マロニー 悪魔とサイモン・フラッグ / アーサー・ポージス
数学を題材にした小説をあつめた短編集。使われている数学ネタは超立方体、無限の猿定理、クラインの壺など。僕は全部知っていました。
この本の中で頂けない点が3つほどあります。まず1つは解説のウザさ。本編中ででてくる人名や地名などにいちいち細かい注釈がついていて、なにか小説として違和感があります。第2に、小説の最初に要約したあらすじが書いてある!ただでさえ短編なのに、話を読む愉しみを奪うな!そして最後に一番致命的なのは訳のひどさです。この訳が小説本来の良さをある程度台無しにしていると思います。なんで悪魔の一人称が「ぼく」なのかさっぱりわからない。
数学ネタに関する解説は書かれているのですが、数学がわからない人はそもそもこんな本を手に取らないだろうし、この本に興味をもつほどの人はある程度数学を知っているでしょうから、今度はその解説は別にいらない、という何とも中途半端な代物になってしまっています。