吉永良正 「数学・まだこんなことがわからない 難問から見た現代数学入門」

結局、真にすぐれた問題とは、数学者がその解決に取り組むなかから、まったく新しい数学的方法と、新しい数学的対象とを必然的に生み出す問題であるといえるのです。つまり、数学者は一つの問題をとことんつきつめることで、数学的視野の拡大に到達するわけです。数学者の仕事が「問題を解くこと」であるといったのも、その真の意味はそういうことです。


1章はよくある話。2章はポアンカレ予想・P=NP問題、フェルマーの最終定理をとりあげている。この章が僕としては一番面白く読めた。特にP=NP。ポアンカレ予想については3次元球面と3次元多様体の説明が、やさしく説明しているようで、その実結局数学的定義に丸投げしてしまっていて、全く数学を知らない人は辛いだろうな、という印象。


「ごくごく大まかにいえば、n次元球面とホモトピー同値とは、その多様体上の図形をすべて一点に縮めてしまうことができるような構造である、と思っていただいて結構です。」
結構じゃねーよ、とつっこみたくなる。
3章はフィールズ賞を受賞した森重文の仕事について書かれているが、たとえ話ばかりが先行してもう全くわからない。とにかく固有名詞が多く、「あー、何かわかんないけど難しそう」という空気を久しぶりに感じた。
それでも、この著者はすごい仕事をしたと思う。なにより文章が読みやすく、すらすら読める。この読みやすさの上に厳密さを求めるのは酷だ。