筒井康隆 「ポルノ惑星のサルモネラ人間」
「ぼくが認識できたことを、ちょっと整理してお話しするとですね、まず最初、この上ないというようなひどいブスのタレントを見つけ出してくる」
「待った待った。いくらなんでも、この上ないひどいブスというのはタレントの中にはいないよ。いくらキャラクターが面白いからとか、個性的で可愛いからとかいったところで、まず第一に見ていて不快感を催すようなブスというのは、まずタレントにはなれない。これはやはり、素人の中から捜し出してこなければね」
「するとこれはもう、ドラマの企画会議ではなくなっとるわけかい」
「そうですね。これはもう相当大きなプロジェクトということになります。だって素人の中から見つけ出してきたブスを皆で寄ってたかって美人だ美人だとおだてあげて、マスコミのスーパー・スタアにしてしまおうってわけですからね」
「そう。歌がへたでも皆でうまいうまいと褒め、ドラマがへたでも上手上手と皆でおだてあげ」
「ちょっと待てよ。するとその娘は、自分がブスだということにも、歌やドラマがへただということにも気づかない、白痴的な娘ということになるぜ」
「白痴では逆に、面白くありません。ですから、まだその辺の判断のつかない幼女の時期からひっぱり出してきて」
「いや。理想的には生まれた時からだ。まず、『今日、この上なく醜い女の新生児が生まれませんでしたか』といって産院を捜し歩く。するとそのうちには必ず、生まれるなり母親がひと眼見て気を失い、看護婦たちが悲鳴をあげて産室から逃げ出し、医者が『これでも人間か』と絶叫して窓から外へ抛り出したというような、醜い女の赤ん坊にめぐりあえる筈だ」
(イチゴの日)
ポルノ惑星のサルモネラ人間―自選グロテスク傑作集 (新潮文庫)
- 作者: 筒井康隆
- 出版社/メーカー: 新潮社
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ポルノ惑星のサルモネラ人間
妻四態
歩くとき
座右の駅
イチゴの日
偽魔王
カンチョレ族の反映
筒井康隆は以前「時をかける少女」を読んだことがあったのですが、それより断然こちらの方が面白かったですね。自選グロテスク傑作集と銘打ってありますが、そこまでグロテスクが全面に押し出されているわけではなく、内容もバラエティに富んでいます。
各短編の感想。
歩くとき
とにかく読みづらい。wこれは声優複数人の朗読で聴いてみたい。
イチゴの日
上の引用を見てもらうとわかりますが、大変ひどい。男なので僕は笑わせてもらいましたけど、これは女性に薦めちゃだめな感じがしますね。
妻四態
個人的には短編集中1位の面白さ!笑わせてもらいました。8ページしかないし、10分ぐらい読めちゃいます。こういうバカなやつがもっと読みたいですね。