大森望/豊崎由美 「文学賞メッタ斬り!」

豊崎 とにかく芥川賞は選考委員が……。シンちゃん(石原慎太郎)もひどいでしょっ!テルちゃんもシンちゃんも、たぶん二十世紀後半の現代文学とか読んでないもん。このひとたち、いわゆる新しい小説なんてものを絶対読まないタイプ。でも、逆に言えば、新しい文学が読めないことが売りになってるのかも、わたしからすれば、テルちゃんが嫌いって言うから読もうって気にすらなるし。ある種のブランドになりつつあるとか?
大森 《噂の真相》の文壇事情でもはっきり書かれてたからね、「文壇の抵抗勢力」って(笑)。
豊崎 だから帯にも書きゃいいんですよ。"宮本輝が読めなかった問題作"って。そうすると本当の小説好きがみんな買ってくれる、と。あ、テルちゃんって役に立ちそうじゃん。もとい、宮本輝は芥川賞にずっといてよし(笑)。こういうえらい人を選評をネタに小バカにできる楽しみもあるし。

文学賞メッタ斬り!

文学賞メッタ斬り!

ぶちまけ度 ★★★★★★★★★☆
豊崎さんの暴走度 ★★★★★★★☆☆☆
総合 ★★★★★★★☆☆☆

文学賞を軸にして、日本の「文壇」事情をいろいろとぶっちゃけた本。(今時文壇なんてあるんでしょうか)宮本輝渡辺淳一石原慎太郎をとにかくボロクソに言ってるのが面白かった、だってえらそうだからあの人達。それからYoshi「Deep Love アユの物語」を「生まれてこのかた読んだ本の中で最低最悪の代物」、「村上春樹の『ノルウェイの森』を真似して出来上がった片山恭一のひどい小説『世界の中心で、愛をさけぶ』」など、常々売れることに対して不満を持っていたものをしっかりけなしてくれているのが爽快だったり。
6年も前の本で、そのころ僕はまだそんなに読書をしているわけではなかったので出てくる作品も知らないのが多いのだけど、それでも面白かった。文学賞受賞作品を容赦なく採点してるのもよかったですね。これの影響で古川日出男「アラビアの夜の種族」、冲方丁マルドゥック・スクランブル」を買った。あと、一度は諦めた舞城王太郎をもう一度読んでみようかな、という気にもなったし、読書好きには裾野を広げるという意味でもおすすめ。