Bjarne Stroustrup 「C++の設計と進化」

私は新しい技術を人びとに推奨しその進化を説得するとき、無理をせずにゆっくりゆっくりやるのが好きだ。人びとを"洗脳する"テクニックがあることは知っているが、そういうテクニックには基本的に違和感を感じる。しかもそれらは、長期的かつ大規模に有効ということはありえないだろう。簡単に宗旨を変える人は、そのうち自分のそばからもいなくなる。私は熱心なファンや信者よりも、批判精神を持っている人のほうが好きだ。理論よりも小さな証拠、論理的な議論よりも小さな事実、私はいつも後者を尊重する。




私は、人びとの役に立つと信じた技術やアイデアの普及に、これからも力を注ぎたい。自分たちの技術や考えへのアクセス性を増し、それらを専門家の玩具ではなく社会の道具にしていくことは、科学者や知識人の義務だ。もちろん、人間が理想の犠牲者になってはならない。私は狭量なプログラミング言語によるたった一つの設計スタイルを、人びとに強制しているわけではない。人びとのものの考え方と仕事のやり方はものすごく多様だから、「これが普遍的に最良」と称する特定のスタイルを押しつけたら、生ずるのは被害だけだ。C++は意図的に、多様なスタイルを実現できる設計になっている。それは、「たった一つの正しいやり方」を強制する言語ではない。

C++の設計と進化

C++の設計と進化

ボリューム ★★★★★★★★★☆
僕にはまだ早い度 ★★★★★★★★☆☆
総合 ★★★★★★☆☆☆☆

C++の設計者が、C++の全体的な設計の理由や歴史的な経緯などを書いた本。僕はまだC++を使い出して1年ぐらいだし、正直プログラミングに大して真面目に取り組んだとは言えない人間なので、特に具体的なコードを見てもよくわからない部分が多く、特に第二部はもう少しC++の各機能をとりあえず上辺だけでも使えた気になったときにまた読もうと感じた。逆に、C++初心者の僕でも第一部は興味深く読むことができた。言語の設計についての「なぜ」を知り、また意識することはC++だけでない、他の言語を理解する一助にもなるのではないだろうか。しかし、とにもかくにも僕にはまだこの本の感想を書くレベルにすら達せていないと痛感した。数年後にもう一度読み、その時は今よりももっと納得出来るようでありたい。
それにしても、この500ページを超える分厚い本を「楽しんで書けた」という著者のエネルギーはすごい。