ロバート・A・ハインライン 「夏への扉」

 僕は考えようとした。頭がずきんずきんと痛んだ。ぼくはかつて共同で事業をした、そしてものの見事に騙された。が――なんどひとに騙されようとも、なんど痛い目をみようとも、結局は人間を信用しなければなにもできないではないか。まったく人間を信用しないでなにかやるとすれば、山の中の洞窟にでも住んで眠るときにも片目をあけていなければならなくなる。いずれにしろ、絶対安全な方法などというものはないのだ。ただ生きていることそのこと自体、生命の危険につねにさらされていることではないか。そして最後には、例外ない死が待っているのだ。

夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))

夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))

時間跳躍をテーマにしたSFを体験したのはこれが初めてではありませんでした。筒井康隆時をかける少女、映画版「時をかける少女」、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」、「シュタインズ・ゲート」・・・世の中にはタイムトラベルの話が溢れています。そんな中で有名すぎるこの古典。SFにはまりだした頃勧められて、買ったはいいもののずっとほったらかしでした。
訳書を読んだ経験があまりないのと、出版が1979年ということで、文章が結構奇妙だなーと思って読んでいました。正直中盤までは、退屈とは言わないまでも少しだるい。まあ30年も前の話だしね、と思っていました。しかしラスト50〜60ページのスピード感はどうだろう。全身の毛穴が開くあの感覚。爽快とはこういうことだ!