1週間ガバ(GABBA/GABBER)を聴き続けてみよう
GABBA/GABBER
ガバ(GabberまたはGabba)は、音楽の一ジャンル。ハードコアテクノの一つに分類される。音楽の特徴の一つに曲のBPMの速さが挙げられる。140以上の高速BPMの曲も多く、なかには300近いBPMの曲も存在する。全てにおいて非常に破壊的な特徴を持つ。そのひとつとして、キックドラムの音にディストーションをかけた「ガバキック」を使用することが挙げられる。
ガバ (音楽) - Wikipedia
ジャンル名であるガバはオランダ語で友人、仲間を意味する。DJ "Hardy" Ardy Beesemerの主宰するクラブイベントに入ろうとした人物が「あなたは仲間(Gabba)ではないから入れない」とクラブの警備員に言われたのが音楽ジャンルの名前の由来であるという。
1990年代初頭にロッテルダムから発祥したロッテルダムテクノをルーツに持つ。1990年代後半に発生したガバはシーンの表舞台からは遠ざかっている状況が続いていたが、2002年になってオランダを中心にシーンの表舞台に登場した。2002年以降ヒットしたガバと、それ以前のガバでは曲の傾向が異なる面もあることから、両者をオールドスクール(Oldskool)、ニュースクール(Nuskool)などと呼んで区別している。
GABBAというのは音ゲー的にはわかりやすいジャンルかとも思うのですが、
- ロッテルダムテクノ、ハードコアと何が違うのか
- Nu-style GABBAってなんだろう
- 派生ジャンル多くね?
などなどもやもやした部分が数多くあります。
音ゲーにおけるGABBA
まずはbeatmaniaに収録されている「GABBA」がジャンル名についたものから当たってみましょう。
GENRE | NAME | COMPOSER | BPM | |
GABBA | 250bpm | Akira Yamaoka | 250 | ■ |
NUSTYLE GABBA | ay carumba!!!! | teranoid&MC Natsack | 180 | ■ |
NU STYLE GABBA | BLUE MIRAGE | DJ CHUCKY | 170 | ■ |
TRANCECORE MEETS GABBA | BRAINSTORM | Hardcore United Tokyo(teranoid & DJ TECHNORCH) | 180 | ■ |
GABBA | ELECTRIC MASSIVE DIVER | L.E.D.-G | 178 | ■ |
NUSTYLE GABBA | gigadelic | teranoid feat. MC Natsack | 173 | ■ |
GABBAH | HELL SCAPER | L.E.D. LIGHT-G | 200 | ■ |
GABBAH | HELL SCAPER (SLASHING MIX) | L.E.D. LIGHT-G remixed by DEPROGRAM MAN | 200 | ■ |
GABBAH | HELL SCAPER -Last Escape Remix- | DJ TECHNORCH fw.GUHROOVY | 180 | ■ |
GABBA | HYPE THE CORE | DJ CHUCKY | 190 | ■ |
GABBA | rottel-the-Mercury | sampling masters MEGA | 200 | ■ |
NU STYLE GABBA | THE DEEP STRIKER | L.E.D.-G | 173 | ■ |
NU STYLE GABBA | THE DETONATOR | teranoid vs L.E.D.-G | 173 | ■ |
GABBA | tripping contact (teranoid&MC Natsack Remix) | kors k vs teranoid | 187 | ■ |
DECEPTIVE GABBA | VANESSA | 朱雀 | 185 | ■ |
NU STYLE GABBA | VANISHING POINT | DJ CHUCKY | 170 | ■ |
16曲も見つかりました、かなり多いですね。
ジャンル名は少し耳慣れないものもありますが、基本的にはGABBAとNU STYLE GABBAに分けてよさそうです。
まず両者に共通するのは太いガバキックと170〜200ぐらいのBPMで、大変わかりやすい特徴です。ここではロッテルダムテクノ、ハードコアとどう違うのかについては全然わからないのでとりあえず無視します。
GABBAとNU STYLE GABBAの違いとしては、NU STYLE GABBAは「3連符」(12分音符)が存在することでしょうか。とりあえずこの時点で私的な認識としては、
GABBA + 3連符 = NU STYLE GABBAという感じです。
DJ TECHNORCHの「ハードコアテクノ入門」を見てみよう
ガバについてググると必ずと言っていいほど辿りつくのがDJ TECHNORCH氏のブログです。DJ TECHNORCH氏は「改訂 ハードコアテクノ入門」という記事を書いています。私は彼の音楽や文章が大好きでブログもGoogle Readerに登録しており頻繁に見に行っているのですが、YouTubeの動画で大量に埋まった記事は音楽を聴かないといけないため、どうしても時間がかかるということで読み飛ばしていました。まだ完成していないようですが、これを気にとりあえず現在まとめられているものを全て聴いてみましょう。
■http://www.technorch.com/archives/2182511.html
音ゲーのGABBAからいきなりここに来ると面食らいますが、それもそのはず、音ゲーのGABBAの中で一番古い曲、「HELL SCAPER」の初出は2000年。ここに挙げられている楽曲は1983〜1992年ですから、さらに10年前後さかのぼった物ですね。
- Mescalinum United / We Have Arrived [1991]
「GABBERの始祖」として挙げられています。何も言わずに曲だけ聴かされると、今の僕なら「ハードテクノ」の棚に入れてしまいそう。
- De Euromasters / Amsterdam Waar Lech Dat Dan? [1992]
この記事の音楽を一通り聴いていくと、これが群を抜いて「速い」ということがわかります。「We Have Arrived」から1年でBPMは136→147へと加速。
New Beat→Bleep Techno→Belgian Hardcoreという流れが紹介されていますが、門外漢の僕にとってはこれらはまだGABBAまでは相当遠い印象を受けます。
■http://www.technorch.com/archives/2222095.html
- Modular Expansion / The Cubes [1990]
- Spectrum / Brazil [1990]
- Joey Beltram / Energy Flash [1990]
- Ceejay (Bolland) / Get Busy Time [1991]
- CUBIC 22 / Night In Motion [1991]
- Second Phase / Mentasm [1991]
- Human Resource / Dominator [1991]
- Outlander / Vamp [1991]
- T-99 / ANASTHASIA [1991]
正直GABBAとは程遠いと思いますし、ハードコアというにもしっくりこないなぁという気がするのですが、そういうことはどうでもよくなるぐらい聴いてて楽しいですね。このへんを最近聴きまくっていたのでとても楽しい。「CUBIC 22 / Night In Motion」「Outlander / Vamp」あたり最高ですね。
「T-99 / ANASTHASIA」はGABBAっていうより・・・うーん、よく知らないんですが、RAVEってこんな感じじゃなかったっけ・・・?わからない。
- L.A.Style / James Brown Is Dead [1991]
「オーケストラヒットサンプリング」ってなんのことかと思っていたんですが、この和音が重なりまくったぶっとい音のことなんですね。たしかにとんでもない変遷。よく知らないけど「ジュリアナ」という単語が脳裏に浮かびます。
■http://www.technorch.com/archives/2225148.html
- [ROT001]De Euromasters / Amsterdam Waar Lech Dat Dan? [1992]
- [ROT002]The Sound of Rotterdam / The Final Experiment [1992]
- [ROT003]DJ ROB / Boy's Interface [1992]
「De Euromasters / Amsterdam Waar Lech Dat Dan?」は「DJ TECHNORCH / GOTHIC SYSTEM」と並べて聴くと面白い。ROT002とROT003もすごいクオリティだ・・・ガバというよりロッテルダムテクノを探っている感じになっていますが、楽しいのでよしとしましょう。
■http://www.technorch.com/archives/2235309.html
- [ROT004]Rotterdam Termination Source / Poing [1992]
- [ROT006]Rotterdam Termination Source / Poing (Holy Noise's Jump A Little Higher Remix) [1992]
- [ROT006]Rotterdam Termination Source / Poing (Stuiterhouse) [1992]
- [ROT006]Rotterdam Termination Source / Poing (Tune Request) [1992]
- [ROT006]Rotterdam Termination Source / Poing (Easy Synth) [1992]
- F.O.X. / Boing [1992]
- Rotterdam Termination Source / Poing [2007]
「POING」だらけ。作ってて楽しくなっちゃったんですかね。深夜のテンションという感じがします。「Ultimate Poing Collection」とか知らない人が聴いたら意味不明なディスクなんでしょうね。ちなみにこの「POING」の時点でBPMは156、「EASY SYNTH」では170まで上昇しています。(部分的にはもっと速い)
■http://www.technorch.com/archives/2240154.html
- [ROT009]De Euromasters / Alles Naar De Klote [1992]
- [ROT009]De Euromasters / Alles Naar De Klote (250 BPM REMIX) [1992]
- [ROT161]De Euromasters / Alles Naar De Kl-te (Remix) [1997]
- [ROT100]De Euromasters / Alles Naar De Kl-te (Neophyte & Evil Activities Remix) [2007]
GABBAだ、GABBAがやってきた!この3分に満たないトラック、強烈な吸引力があります。僕が拙いながら聴いたことがあるGABBAと比べると、それらがなんともお行儀よいものに聴こえてしまうぐらいうるさくて汚くていい。
■http://www.technorch.com/archives/2245290.html
- [ROT10]General Noise / Rotterdam Subway [1992]
- [ROT11]2 Low 4 Zero / Fast [1992]
- [ROT12]King Dale / Utter [1992]
- [ROT13]German Division / Blow Job [1992]
- [ROT14]Morlock / Der Energy [1992]
- [ROT15]Holy Noise / The Nightmare (Power Mix) [1992]
この辺はプログラミングしながら聴いていたのですが、とってもノれますね、作業がはかどります。ROT14が良いですね。
■http://www.technorch.com/archives/2249919.html
- Lenny D* & Tommy Musto / Everything Bamboo [1987]
- Frankie Bones & Lenny Dee / Just As Long As I Got You [1989]
- Spectrum / Brazil (Lenny Dee & Eric Kupper Remix) [1991]
- Lenny Dee & Nico / Gonna Take You Higher [1991]
- Lenny Dee / Baby [1992]
- Lenny Dee vs. DJ Edge / Silence Of Eternity [1993]
- [MOK14]Lenny Dee & Ralphie Dee / Brain Confusion [1993]
Lenny Deeの変遷が面白いです。数が多いので、最初の「Everything Bamboo」と最後の「Silence Of Eternity」や「Brain Confusion」を聴いてみてください。まさに「どうしてこうなった」です。
- Omar Santana / Do What You Want [1989]
- Omar Santana / Come On And Jam [1991]
- [H2O1]Omar Santana / Slave Invaders [1993]
- [H2O2]Omar Santana / Mind Bender [1993]
同じくOmar Santanaの変遷。5年ぶりに会う知人はもはや知人ではない。
最後まで聴いてみて、とりあえずEuromastersスゴイという結論です。多くて全部聴くのがめんどくさいよ!という人も「De Euromasters / Amsterdam Waar Lech Dat Dan?」「De Euromasters / Alles Naar De Klote」の2つはぜひ聴いておけばいいと思います。
「これらがガバってことでいいの?ロッテルダムテクノっていうのは?」という疑問が浮かんだのですが、wikipediaさんには以下のようにあります。
ロッテルダムテクノ(Rotterdam Techno)は、オランダのロッテルダムを発祥の地とするテクノの一ジャンルである。
ガバ (音楽) - Wikipedia
1990年代前半に生まれたハードコア・テクノのよりヘビーなバージョンである。オランダのアムステルダムに住むDJらがイギリスの曲を好んでかけていることに反発したロッテルダムのDJが作り上げたジャンルである。 このジャンルの正しい名称はガバ("Gabber"/"Gabba")であるが、「ロッテルダムテクノ」とは日本においてエイベックストラックスがコンピレーション盤をリリースする際、わかりやすいジャンル名として名付けたものであるため、海外ではこのジャンル名は通じない。
ということで、現時点での私の認識をまとめると
- GABBA = ROTTERDAM TECHNO
- GABBA ⊂ HARDCORE TECHNO
- Alles Naar De Klote ∈ GABBA
です。
(ROTTERDAM TECHNO ⊂ GABBA の方がいいかも?)
Wikipediaで調べてみよう
既にWikipediaからの引用を挟んでいますが、もう少し事細かに見てみましょう。
まずはハードコアテクノ(Hardcore Techno)の項より。
メスカリナム・ユナイテッド (Mescalinum United) の"We Have Arrived"(1990年)が、最初のハードコアテクノの曲であると考えられる事が多い。
ハードコアテクノ - Wikipedia
これはDJ TECHNORCH「ハードコアテクノ入門1」で挙げられていたものですね。
ガバ (Gabberあるいはgabba)
ハードコアテクノ - Wikipedia
140BPM以上の高速な、アーリーレイヴから派生したハードコア。
ニュースタイルガバ(Nustyle Gabba)
ハードコアテクノ - Wikipedia
ビートが高速化しすぎ、ダンスミュージックとしての実用性が減少したガバ/スピードコアシーンへのカウンターとして発生した、実用性を重視したハードコアテクノ。
GABBAの基準が「140BPM以上」というわけではないとは思いますが、現実的には180〜200前後が多いのかな?(適当。)
それに対してNUSTYLE GABBAは「実用性」という単語が目を引きます。つまりはクラブで踊れる、踊りやすいようにということですね。
次はGABBAの項。最初にも載せましたがもう一度。
ガバ(GabberまたはGabba)は、音楽の一ジャンル。ハードコアテクノの一つに分類される。音楽の特徴の一つに曲のBPMの速さが挙げられる。140以上の高速BPMの曲も多く、なかには300近いBPMの曲も存在する。全てにおいて非常に破壊的な特徴を持つ。そのひとつとして、キックドラムの音にディストーションをかけた「ガバキック」を使用することが挙げられる。
ガバ (音楽) - Wikipedia
BPMに関してHARDCORE TECHNOの項と矛盾が生じています。140以上なのかそれより遅いのもありなのかどっちやねん!音ゲーマー的にはBPM140以下はGABBAとしては見れないですが・・・
それにしても、素人としては一番わかりやすい基準であるBPMの範囲がかなり広いですね。
それではNUSTYLE GABBAの項を見てみましょう。
ニュースタイルガバ(NU STYLE GABBA,NEW STYLE GABBA)とは、ガバから派生したハードコアテクノの音楽ジャンルの一つである。
ニュースタイルガバ - Wikipedia
ハードコアシーンは、1990年代後半に決定的に分割された。 一部のプロデューサーは、高速なガバに使われる伝統的なエンベロープの長いバスドラムよりも、低速のガバに使われる、低音がより深く激しいバスドラムを受け入れ始めた。
この遅いテンポの新しいサウンドは"メインストリーム"や"ニュースクール"と呼ばれ、ハード・ハウスのようになることを始め、テンポが遅くなっていった。 そして最終的には、160-170BPMの範囲で作成されるようになった。
ガバとの決定的な違いはリズムが変則的で、6/8拍子や3連符を多く用いる点である。
青字で示した部分が大きな特徴かと思います。GABBAの項ではBPM140〜300と広かった範囲が一気に160〜170前後、とかなり限定されています。そしてやはりNUSTYLE GABBAは3連符が多いみたい。この3連符についてもう少し考えてみましょう。
BPM170において4つ打ちと3連符を比較した場合、1つの音の長さにはかなりの違いが出ます。3連符の1つの音の長さは、4分音符の4/3倍になります。これを4つ並べると、170*3/4 = 127.5となります。Wikipediaのハード・ハウスの項を見ると
通常のハウスよりも速めのテンポ(130bpm〜140bpm程度)
ハード・ハウス - Wikipedia
とありますから、実はよく似た音の長さになっているのですね。このように考えると、音ゲーのNUSTYLE GABBAの曲がBPM173だらけなのも何か納得がいきます。173*3/4 = 129.75なのです。つまり130にしたいのでは?
さて、ここまで素人の当て推量を書いてきましたが、どうもGABBAとNUSTYLE GABBAは名前は似ていても、中身は全然違うもののようです。
レーベルを巡ってみよう
Wikipediaの「ガバ」の項にレーベルサイトがたくさん挙げられているので、そこを参考にYouTubeでかたっぱしから聴いてみましょう。
Sensory Violation
SV001 | Psycho | HAMMER DAMAGE | ■ |
SV009 | Old School Overhaul | HAMMER DAMAGE | ■ |
SV009 | Spin Cycle | HAMMER DAMAGE | ■ |
SV009 | Congratulations | HAMMER DAMAGE | ■ |
SV009 | Dawn Of The Shed | HAMMER DAMAGE | ■ |
「Dawn Of The Shed」がすごいです。「Congratulations」には映画「SAW」の声が使われていますね。トビン・ベルとの相性ばっちり。
Mokum Records
MOK 4 | Ore Slope | Haardcore | ■ |
MOK 7 | Hardcore Will Never Die (Acid Overload) | Hammerhead | ■ |
MOK 7 | Acid riot | Hammerhead | ■ |
MOK 9 | The Box | High Energy | ■ |
MOK 13 | Everybody In The House | Haardcore | ■ |
MOK 13 | Amsterdam | Haardcore | ■ |
MOK 16 | Pump That Pussy | Original Gabber | ■ |
MOK 17 | 20,000 Volt | High Energy | ■ |
MOK 18 | Feel The Dream | Chosen Few | ■ |
MOK 31 | Toxic | Haardcore | ■ |
MOK 79 | I Show Trickz | Chosen Few | ■ |
MOK 81 | Annihilator | Scott Brown | ■ |
数曲聴いて、「うーん、ハードコアだけどガバではないっぽいものも多いなぁ・・・」と思っていたのですけど、「Haardcore / Toxic」を聴いて安心しました。これがガバじゃなかったら何がガバなんでしょう。
(現在4日目。この記事は1週間かけて書く予定です)