「NOVA 1」

敵の攻撃によって地中深く沈んでしまった会社を残された同僚たちといっしょに掘りはじめてもう半年近くになるのだが、あてにしていた失業保険がなかなか出ないこともあって、いよいよ貯金が心細くなってきた。そのせいなのかどうなのか帰宅すると、ねえ今日はどうだったの、どんな感じなのよ、などと妻がしつこく尋ねてくる。
うん、もうすぐだよ、だって今日なんかコンピュータが二台も出てきたんだからな、それも秘書課のだぞ、だから社長室が発掘されるのはもう時間の問題さ、ああそうとももうひとがんばりだよ、とスーツをハンガーに掛けながら答えた。
(社員たち)

北野勇作「社員たち」
小林泰三「忘却の侵略」
藤田雅矢エンゼルフレンチ
山本弘「七歩跳んだ男」
田中啓文「ガラスの地球を救え!」
田中哲弥「隣人」
斉藤直子「ゴルコンダ」
牧野修「黎明コンビニ血祭り実話SP」
円城塔「Beaver Weaver」
飛浩隆「自生の夢」
伊藤計劃屍者の帝国

テンション推移 ★★★★★★★☆☆☆
総合 ★★★★★★★★☆☆


SFをテーマにした、「異形コレクション」のような短編アンソロジー。全体的にレベルが高く、特に前半の作品が面白かった印象。枚数が多いものは少し中だるみだったかな?
最初の「社員たち」「忘却の侵略」はくだらない会話が心地良くて、とてもいい滑り出し。「ガラスの地球を救え!」はわけわからなすぎるくだらなさ。がしかし、その次の「隣人」でどん底まで落とされる。「ガラスの地球を救え!」の後に配されているのが大変悪質。その後の「ゴルコンダ」がすごく平和で癒されたけど。「ガラスの地球を救え!」「隣人」「ゴルコンダ」の並びはある意味すごいです。
「隣人」が本短編中一番ガツンときた。でもこれSFなのかな?「異形コレクション」に載っていたほうがそれっぽいような。